当初の予定より実質3年遅れの「ペイオフ全面解禁」が、いよいよ4月1日に予定されていますが、このペイオフ制度とは一体どんな制度なのでしょうか?
そもそも、日本でこの「ペイオフ」つまり「預金保険制度」ができたのは1971年、今から34年も前のことでした。でも当時は、金融不安など全くなく、銀行が破綻するなどとは誰も想像すらしなかった時代でしたので、ほとんど関心をもたれなかったのではないでしょうか。この預金保険制度が世の中の注目を集めるようになったのは、1996年に政府が「ペイオフ凍結宣言」をしてからです。その前年に大阪にある某金融機関が破綻したのですが、預金総額が少なかったこともあり、国が預金の全額を保護しました。でも政府は、この破綻を氷山の一角であると予想し、金融不安が増大するのを恐れ、翌年、とりあえず今後何があっても預金は国が全額保護をすることを宣言したのです。これが「ペイオフ凍結」で、期限は5年間でした。1995年という年は、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件があった年ですが、4月には80円を切る超円高もあり、経済界も大変な年でした。株のピークが1989年、不動産のピークは1992年、個人の所得のピークは1994年であり、バブル崩壊後、誰の目にも「日本は下り坂」であることが見え出した頃でもあります。そして、思ってもみなかった金融機関の破綻。預金者の動揺はかなりのものであったことは想像に難くありません。
でも、この時に全額保護された「預金」とは、そして「預金者」とは本当はどういうことなのでしょうか? 金融広報中央委員会が発行している「金融商品の保護」という小冊子の中で「預金者の保護とは」を見ると、
「預金とは、その言葉どおり、金融機関にお金を預けることです。“預かったものはちゃんと返します”という約束を果たすために、金融機関は自らに保険をかけています。
すなわち、金融機関自身が保険料を払い、自ら破綻した(預金の払い戻しができない状態になった)時には、預金者に対して保険金が直接支払われる、あるいは、預金等を譲り受けた救済機関に対して資金援助が行われ、預金が保護されるようにしているのです。」
とあります。
では「預金する」ということは、本当に「金融機関にお金を預けること」なのでしょうか? 何かをどこかに預けるには、必ず預かってもらう費用をこちら側で支払います。でも、金融機関に預金すると、私達はその預金に対して利息をもらうことができます。最近はあまり見られませんが、窓口で預金するとティッシュペーパーやメモ帳などの景品をもらえたりもしました。つまり、「預金する」ということは、表向きは「預ける」ことなのかもしれませんが、本当は「金融機関にお金を貸している。その見返りとして利息をもらっている」ことなのです。預金は、「預金等債権」なのです。
だから、貸している先が破綻したら、貸したものは「戻ってこないかもしれない」と考えるのが自然なのです。でも、ほとんどの人はそう思っていません。銀行も「預かったものはちゃんと返したい」と思っています。だから、せめて少額預金者のためには預金を保護しようと保険をかけているわけで、その保険金が「1000万円プラスその利子」に相当するものなのです。1000万円超の部分は、当然自己責任の部分ということになります。すなわち、これからは「貸したものは返ってこないかもしれない覚悟」が必要であり、そのために、自らの責任で金融機関を選択することが求められる世の中になるということなのです。
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