銀行が巨額の不良債権をかかえ、金融不安が広がり、政府が1996年にペイオフを凍結してから9年、この4月よりようやくペイオフが全面解禁(凍結解除)となりました。今後は、金融機関が破綻した場合は、その破綻状況によっては、普通預金も預金保険の支払い限度額(元本1千万円とその利息)を上回る部分が一部カットされるかもしれません。今回は、3年前の一部解禁の時のような騒ぎもなく静かにスタートした感があります。無利息で決済サービスがあり、預金者がいつでも払い戻しができる「決済預金口座」が新設され、逃げ道ができたせいもあるかもしれません。
では、この「預金保険制度」の概要をみていきましょう。
・ 対象金融機関は?
日本国内に本店を置くすべての預金取扱い金融機関がこの制度に加入しています。銀行、信金中央金庫、信用組合、全国信用協同組合連合会、労働金庫、労働金庫連合会などです。農協や漁業協同組合などは、預金保険制度には加入していませんが、「農水産業協同組合貯金保険制度」という、預金保険制度とほぼ同様の制度に加入しています。日本に本店のない外国銀行の在日支店は対象外です。又、日本国内に本店のある金融機関であっても、海外支店で受け入れた預金は保険の対象になりません。そして、金融機関は「預金保険」という保険に加入をしているわけですから、それぞれ保有する預金残高に応じて保険料を支払っています。
・ 対象となる預金などは?
普通預金、当座預金、別段預金、定期預金、定期積金、貯蓄預金、通知預金、掛金、納税準備預金、金融債(ワイド等の保護預り専用商品)、元本補填契約のある金銭信託(貸付信託・ビッグ等を含む)、上記の預金等を用いた積立・財形貯蓄商品
・ 対象とならない預金などは?
外貨預金、譲渡性預金、保護預り専用商品以外の金融債、元本補填契約のない金銭信託(ヒット・スーパーヒットを含む)
・ 保護される範囲
◇ 対象預金等の元本合計金額が1,000万円以下の場合
元本 + 元本に付される利息
◇ 対象預金等の合計額が1,000万円超の場合
元本1,000万円 + 元本に付される利息
元本1,000万円を超える部分とその利息については、破綻した金融機関の財産がどの程度残っているかに応じて、払い戻しが行われます。1,000万円を超える部分が一切戻らないということではなく、「預金の一部がカットされることもあり得る」と考えたほうがいいでしょう。
金融機関が破綻しペイオフになった場合、預金保険機構はその破たん金融機関がどのくらいの財産を残しているかチェックし、その財産に応じて払い戻せる預金の大体の割合を決め、預金者に「概算払い」をします。その後、資産の回収や債権者への返済など最終処理をした後、更に戻せるものがあった場合は「精算払い」をする、というのがペイオフの大まかな流れです。
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