ペイオフの概略については前回お話しましたが、では金融機関が破綻した場合、必ずペイオフになるのでしょうか?アメリカの預金保険制度においても、制度ができた1934年から1999年までに2000件にのぼる金融機関の破綻がありましたが、ペイオフが発動されたのは全体の約20%です。又、ペイオフになるのは主に小さい金融機関に限られ、預金のカット率も多くても15%くらいとなっています。その理由のひとつは、アメリカでは自己資本が枯渇する前、つまり早期処理が比較的うまくいっているということが挙げられます。又、日米の家計金融資産の割合の違いも挙げられます。現預金の割合が少ない米に対して、日本は50%以上が預貯金で占められているのが現状です。家計は預金に頼り、企業は銀行に依存している構図が日本にはありますが、同時に1000万円超の大口預金のシェアが日本は高く、米は低いのです。
今後、もし金融機関が破綻した場合は必ずしもペイオフ方式が採用されるわけではなく、破綻金融機関を引き受けてくれる受皿銀行を探して、そこに営業譲渡して資金援助を行う資金援助方式が優先されることになっています。
では、もしもの時に備えて私達はどんな準備をしておけばいいのでしょうか?
● 銀行等の口座の名寄せを自分で行う。
どの銀行にどのくらいの預金があるのかをきちんと把握しておく必要があります。又、住所や姓が変わっているのにそのままになっていないかどうか、確認しましょう。付保預金(上限1000万円とその利子)の払い戻しを受ける際、住民票などの本人確認書類と口座の住所・氏名が違っていると払い戻しが遅れる可能性があります。
● 金融機関の合併には注意
付保預金に関して、合併後1年間は別の金融機関扱いですが、それを過ぎると1金融機関とみなされますので注意が必要です。
● ローンのある場合は
取引金融機関の預金規定、ローン規定を確認しておきましょう。相殺規定ができていれば、申請によってローンと預金残高を相殺することができます。ただ、相殺をした方がいいかはケースバイケースなので注意が必要です。
● 預金の配分に注意
預金保険機構から支払われる時の優先順位は、担保権の目的となっていないもの、満期が早いもの、金利が低いものの順です。つまり、定期預金と普通預金が両方ある場合は、付保預金はまず普通預金の残高に対して支払われます。金利が高い定期預金と決済で使っている普通預金は違う金融機関にしておいた方がいいかもしれません。又、総合口座の定期預金は担保の目的になっていることにも気をつけましょう。
● 資産の分散
複数の銀行に分散するのではなく、これからは金融商品の分散をしておくことが大事です。投資型の商品や貯蓄性のある保険商品なども選択肢に入れて考えるといいでしょう。
ペイオフの問題で大事なことは、今後は破綻処理をできるだけ早期に迅速に行なってほしいということです。処理が遅れれば遅れるほど、その痛み具合もひどくなり、1000万円超の部分のカット率は大きくなります。預金者の負担を少なくするために、先延ばしはせず、債務超過ぎりぎりのところで早めに処理をしてもらいたいものです。そして、私達ひとりひとりが金融機関をきちんとチェックすることも大切です。金融機関を見る私達の目が厳しくなれば、金融機関自身も選ばれ・信用を得るための経営努力をするでしょう。1000万円までは守られるといっても、そのコストは結局は私達預金者が負担していることを忘れてはなりません。 |