2005 9月号 

プラネット通信

第12回 お金を貯める知恵@
FP 加藤惠子


 あるところに大変お腹をすかせたライオンが2頭いました。神様がその2頭のライオンに言ったそうです。
 「今、一番欲しいものを一つだけあげよう。何が欲しいか?」と。
 1頭のライオンは即座に「シマウマの肉が欲しい」と言いました。神様はそのライオンにシマウマの肉をたっぷり与え、ライオンは空腹を満たすことができました。では、もう1頭のライオンは何を望んだのでしょうか?もう1頭のライオンは「シマウマを獲る方法を教えて欲しい。」と神様に頼み、自分でシマウマを獲る技術を身につけたそうです。

*  *  *  *  *  *  *

 日本にはこれまで、お金を増やすためにはどうしたらいいかということを真剣に考えてこなかった歴史があります。それは、持っているお金を銀行や郵便局に預けておけば自然に増えてくれたからです。無駄遣いをせずコツコツと貯めていくこと、それが一番だと考えられていました。当然、そういう世の中では投資マインドは育ちにくく、金融資産の大半は現在も預貯金で運用されています。
 でも、それでいいのでしょうか? 今は預貯金に何年、何十年預けておいてもお金は増えてくれません。その現実をきちんと認識する必要があります。
 「72の法則」をご存知でしょうか? 72を運用利率(年複利)で割ると、元本を2倍にするために必要な年数を求めることができます。この式を利用すると、例えば、運用金利を7.2%にすると、72÷7.2=10 ですから、10年で元本は倍になるということがわかります。
 公定歩合が7〜8%くらいあった1950年代後半から1960年前半には、預貯金に預けておくだけで、10年で元本は2倍になりました。「知恵」も「工夫」も全く必要ありませんでした。でも今は公定歩合で0.1%、預貯金金利に影響を与える「無担保コール翌日物」のレートは0.001%にまで下がっています。


 ほとんどゼロに近い金利状況下においては、預けておくだけで増やすことはもはや不可能になりました。仮に、今、0.04%の預金に預けて元本を2倍にしたいと思ったら、何と1800年かかることになります。人間の寿命がどんなにがんばっても100年前後であることを考えると、これは大問題です。
 それともう一つ、今後もし世の中がインフレになっていったらどうでしょうか? 現在のデフレ状態では、物価が安いので現金の価値は相対的に見ると高いのですが、今後インフレになって物価が上がっていけば、現金の価値は当然のことながら下がります。インフレ率に比例して、預貯金の金利が上がらなければ、資産は増えるどころか目減りしてしまうこともある、ということを考えておく必要があります。
 ここで「72の法則」をもう一度使います。72をインフレ率で割ると、何と元本の価値が1/2になるまでの年数が出てきます。100万円が50万円になるわけではなく、100万円で買えていたものが、200万円出さなければ買えなくなる世の中になるまで何年か、ということです。1%のインフレが来たら72年ですが、もし今後3%くらいのインフレが来たら、24年後と、意外に早く現金資産の価値は半分になってしまうということになります。今後来るかもしれないインフレに負けない運用術を身につけておかないと、予定は大幅に狂ってしまうかもしれません。
 銀行や郵便局が間に入って私たちのお金を増やしてくれる間接金融から、私達が直接的に株式や債券、又それらをファンドにした投資信託などを購入する直接金融へ、世の中は確実にシフトしつつあります。その流れのなかで、どんな金融商品がいいのかではなく、世の中に出回る、又これから出回るであろう金融商品を自分自身できちんと見極め、選択できる力や知恵を身につけていくこと、それがもっとも大切なことであると思います。

 



 奥様の毎日の暮らしをサポートする耳より情報コーナー       後藤田潤子

生前贈与

 ペイオフが解禁になり、1000万円を超える預金については全額保護されないということになりました。それを受けて、“それなら、この現金を早いうちに子や孫に贈与しておこう”という方も増えているようです。これは生前贈与にあたります。
 今号は、生前贈与の方法として、相続時精算課税制度について、まとめてみました。

【相続時精算課税制度の概要】
 簡単にいえば、親から生前に贈与を受けていてもその時は課税されずに、相続がおこったときにまとめて相続税として税金計算をするというものです。

  1.  対象者や対象物の条件について
    贈与者は1月1日時点で65歳以上の親であること、受贈者(贈与される人)は1月1日時点で20歳以上の子どもであることが条件です。
    このとき贈与の対象となるものの種類(たとえば、現金であるか、土地や家といった不動産であるか、株式であるかなど)、金額、贈与回数に制限はありません。

  2.  非課税枠について
    2500万円
    ※住宅取得資金の場合は3500万円までで、非課税枠が1000万円広がります。
    この場合は贈与する親の年齢は問われません。

  3.  非課税枠を超えた場合は・・・
    2500万円を超えた場合のみ、超えた金額に20%
    をかけた金額を贈与税として納めることになり
    ます。

    ▽ たとえば、3000万円を贈与した場合▽
       3000万円−2500万円=500万円  
       500万円×20%=100万円
            100万円が贈与税額です。

  4.  手続き方法
    最初の贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日に税務署に届け出をします。

  5.  相続税としての考え方   
    実際に相続が起こったときにどうすればよいか?  
    この制度を使って受けた贈与財産を、贈与時の価格で相続財産に加えます。そして相続税を計算し、各人の納める相続税で精算します。

注意点として、一度この相続時精算課税制度の適用 を受けると、変更できません。
従来からある年間110万円の基礎控除の適用を受け られなくなります。

 


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Last modified 2006.3.9