2005 10月号 

プラネット通信

第13回 お金を貯める知恵A
FP 加藤惠子


 市場経済においては、規制がない限り、物の価格は「需要」と「供給」が一致したところで決まります。価格は、購入する側からみれば安いほどいいし、売る側からみれば当然高いほうがいいわけです。これが「経済の原則」です。ですから、需要曲線は右下がりの曲線になり、供給曲線は右上がりの曲線になります。

グラフ

 でも、この需要曲線と供給曲線は、まわりの状況の変化で右や左へシフトします。例えば、ビールにつきものの枝豆の価格で考えてみましょう。もし、ビールが値上がりしたら、ビールを飲む回数が減り、枝豆の需要も減るでしょう。枝豆の需要曲線は図のように左へシフトし、その結果、枝豆の価格が下がります。又、ビールの値上がりは、焼酎の価格にも影響するかもしれません。消費者はビールの消費を減らし焼酎を飲む回数が増え、焼酎の需要曲線が右へシフトし、その結果焼酎の価格が上がります。
 又、第1次石油ショックの時のトイレットペーパーの価格高騰のメカニズムも同じです。トイレットペーパーの原料である紙パルプを生産するために石油が必要。
 例えば、コーヒーの値段が下がれば、コーヒーを飲む回数が増えるでしょうし、逆に値上がりすれば、飲む回数を減らすようになるでしょう。一般に、消費者は「安ければより多く消費する、高くなれば消費を少なくする」傾向があります。
 だとすると、石油価格の上昇はトイレットペーパーの価格上昇につながると予想した消費者が「買いだめ」に走り、需要曲線は右へシフト、一方、価格の上昇を予想した製造業者は「売り惜しみ」に走り、供給曲線は左へシフトし、その結果価格が高騰してしまったという経緯です。石油ショックが起きたとしても、それによってトイレットペーパーの生産コストが直ちに増加するわけではないのですが、それよりも、この場合は、その理屈を知っている人々の予想が価格上昇を引き起こしてしまったわけです。このような予想のことを、「自己実現的予想」といいます。
 金融商品の価格も、又、お金の価格である金利の水準も、理屈は同じです。需要と供給で決まり、様々な要因で右や左へシフトし価格が決まります。そして、そのシフトする要因で一番大きなものが、「予想」です。

 



 奥様の毎日の暮らしをサポートする耳より情報コーナー       後藤田潤子

贈与による相続対策


 簡単にいえば、相続が発生する前に、子供や孫といった相続人予定者に資産をシフトしておくことにより、将来の相続税額を減少させ、かつ、相続税の納税資金に困らないように対策をとるということです。
 資産家の方にとっては、残すものがたくさんあるがゆえに、事前に考えておきたい問題です。


☆ 贈与による相続対策のメリット

 贈与した資産はその後、相続税評価額が上昇しても、その上昇額が相続財産に影響しないということです。
 たとえば、不動産(家・土地)を3500万円で親から子供へ贈与したとしましょう。その後、その近辺の再開発が進み、近くに駅ができて便利になり地価が上がりました。相続時には不動産の価値が4500万円に値上がりしたとします。
 その場合、1000万円分について相続財産に入れて相続税を計算しますか?
 その答えはNO.
 贈与した時点で、不動産の贈与税の計算はおわり、上昇額を相続財産に入れて再計算する必要はありません。
 またおじいちゃん、おばあちゃんから子供を通り越して、孫へ贈与した場合、相続を1回パスすることになるので相続税の課税を1回減らすことができます。
 例えば、株価は、その企業の業績や資産状況、為替や景気、海外市場の影響などによって動きますが、何より一番の変動要因は「市場参加者の予想」なのです。

 本人の意思で財産を移転できるというのもメリットのひとつです。あげたい財産をあげたい人に確実に渡せます。これによって、いわゆる争族にならないよう、予防できます。


☆ 贈与による相続対策のデメリット


 多額の贈与は、贈与税の累進度合いが高いことから通常、贈与税の負担率は相続税の負担率よりも高くなってしまいます。
 つまり、相続対策のために資産をシフトしたつもりが、かえって損することもあるのです。
 相続税対策のために行う生前贈与の移転の場合には、贈与税負担率が相続税負担率よりも低くなるように計算して行うことになります。
 またこの場合にかかる贈与税は相続対策にかかる必要経費だと自分で割り切ってください。

  相続税には相続開始前3年以内に行われた贈与については「生前贈与加算」の規定があります。ケースによって相続人予定者以外の人といった加算対象とならない人への生前贈与も検討する必要があります。 


 


これまでのAdvice

 プラネット通信 2005 8月号
 プラネット通信 2005 6月号
 プラネット通信 2005 4月号
 プラネット通信 2005 2月号
 プラネット通信 2004 12月号
 プラネット通信 2004 10月号
 プラネット通信 2005 9月号
 プラネット通信 2005 7月号
 プラネット通信 2005 5月号
 プラネット通信 2005 3月号
 プラネット通信 2005 1月号
 プラネット通信 2004 11月号
 プラネット通信 創刊号
 ワンポイントアドバイス 保険の予定利率って何?



Copyright 2001-2006 K-Planet Corp. All rights reserved.
Last modified 2006.3.9