「お金を貯める知恵」でお話してきた「フィナンシャルプランニング」は人生における「攻めの部分」に当りますが、今回からのテーマである「リスクマネジメント」は人生における「守りの部分」といえます。更に「フィナンシャルプランニング」で使う「リスク」は「変動性」とか「不確実性」といった意味で使われますが、「リスクマネジメント」で使う「リスク」は「危険」とか「損失の可能性」という意味になります。そのリスクをどのように対処するか、その処理方法が「リスクマネジメント」です。
私達の日常生活には様々なリスクがありますが、その対処方法はリスクの種類によって自ずと違ってきます。
下記は、リスクの発生頻度とその損失の大きさを図にしたものです。上にいくほど損失は大きく、右にいくほど発生頻度は高くなります。
「ア」は発生頻度が高く、かつ損失の可能性も大きいので、リスクマネジメントにおいてはリスクの発生頻度をゼロにする、つまりリスクそのものをなくしてしまう「回避」を選択します。例えば、「お酒を飲んだら車の運転はしない。」といった時です。
「イ」は、リスクの発生頻度は高いけれど損失の可能性はそれほどでもないので、その頻度や損失の規模を「小さくする方法」(減少)を選択します。「病気にならないように食事に気をつける」などです。
「ウ」はリスクの発生頻度も低く、損失もさほどではないので、特に対処方法は選択しない、つまり、この場合は「放置」します。例えば、「すぐに出荷してしまう工場の製品には火災保険をかけない」といった例が考えられます。
「エ」は発生頻度は低いけれど、もしおきるとその損失は大きいという場合ですが、この場合は、そのリスクを何かに「転嫁」するのが効果的なリスクマネジメントといえます。「保険に加入する」ということは、この「転嫁」のひとつの方法と言えます。
では、リスクにはどんな種類があるでしょうか?
まず、人に関するリスクです。「入院する」、「働けなくなる」、「死亡する」などのリスクです。治療費や収入減、生活費の確保など経済的な負担の増加が考えられます。
次は、物に関するリスクです。「火災や地震」、「盗難」、「破損・汚損」などでしょうか。この場合も、修繕したり、あるいは新しく調達するための経済的な負担が生じます。
3つめは、日常生活における賠償リスクです。私たちの社会では、他人に迷惑をかけたら相応の弁償義務が生じます。車の事故などがその代表例ですが、その他にも、自転車の事故やマンションの階下への水漏れなど、考えると結構たくさんあるものです。
このようなリスクをカバーするために、「保険」が役に立つわけですが、保険を考える前に、各リスクに対応する「公的保障」がどのくらいあるかを確認する必要があります。つまり、公的保障では足りない分について、「私的準備」でカバーするということになります。
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