2007 4月号 

プラネット通信

第31回 リスクマネジメント その7
FP 加藤惠子

 損害保険の起源がヨーロッパの商業都市で行なわれていた「海上冒険貸借」である一方、生命保険の起源は、中世ヨーロッパの都市で行なわれていた「ギルド」(特権的同業者組合)であると言われています。同じ仕事をしている仲間同士で、仕事がうまくいかなくなった時の資金援助や、病気になった時、死亡した時の生活保障のために皆でお金を出し合い、いざという時に助けあう、そのために考えられた仕組みでした。

  今日のような、死亡率に基づく合理的な保険料の計算による生命保険が誕生したのは、18世紀のイギリスにおいてです。「生命保険の加入者にとって負担する保険料は一律に決められるのではなく、個々人のリスクの大きさに比例したものであるべきである」という理論に基づくシステムがこの頃に出来上がったのでしょう。リスクに会う確率が高ければ保険料を相応に高くする、これを「給付反対給付均等の原則」と言いますが、保険システムにおける「公平性」は、制度を維持していくためにはとても大切です。

  このように、公平な保険料を決める基礎率の一つに「予定死亡率」があります。死亡率のもとになる「生命表」には、5年ごとの国勢調査に基づいて作成される「国民生命表」、簡便な方法で国が毎年作成している「簡易生命表」、そして、国内の生命保険会社の加入者の死亡データを基に作成される「生保標準生命表」があります。生命保険料の死亡率を計算するために使用されるのはこの「生保標準生命表」ですが、この数字が今年11年ぶりに改訂され、「生保標準生命表1996」から「生保標準生命表2007」になりました。平均寿命の延びを考えれば、見直しは当然のことと言えるでしょう。

  この「標準生命表」には、「死亡保険用」、「年金開始後用」、「第三分野用」の3種類があり、更にそれぞれに男性用、女性用があります。生命保険会社はこの生命表の数字を保険料計算に使用しているのですが、実際の死亡率が多少ブレても保険会社の経営が危なくならないように、実は安全を見込んで修正した数字を使用しています。つまり、「死亡保険用」は死亡率を若干割り増ししていますし、「年金開始後用」と「第三分野用」は若干割引いています。あくまで「予定死亡率」として使用しているので、実際の数字で預かった保険料が結果的に余れば、剰余金として契約者配当金の原資となります。同じ「標準生命表」を使いながら、保険会社によって保険料が違うのは、このあたりの各社の裁量によるからなのです。

  又、保険会社が基にしている死亡率はこれだけではありません。最近は、保険に加入しようとしている人の健康状態による死亡率もかなり重要視しています。例えば、タバコの喫煙の有無や、血圧・BMIの数値などで、これによって保険料はかなり差が出ます。

 保険料を決める基礎率には、この「予定死亡率」の他に、預かった保険料の運用利率である「予定利率」、会社の経費をどの位に見積もるかの「予定事業比率」があります。「予定利率」は、貯蓄性のある保険の保険料に影響しますが、これは保険会社の運用力によるところが大きいでしょう。「予定事業費率」は、保険会社の経営スタンスよって、かなり違ってきます。 このように保険料は、保険会社の経営力や体力と、個々の契約者が持っている条件によってかなり違うのの経営スタンスによってかなり違ってきます。

  で、これからは「商品の選び方」や「加入の仕方」に留意し、既に加入しているものであっても、必要であれば「見直し」も考えた方がいいかもしれません。

 



 奥様の毎日の暮らしをサポートする耳より情報コーナー     FP 後藤田潤子


介護保険を上手に使って住宅リフォーム

「 同居のおばあちゃんの足腰が弱ってきて、そろそろ手すりが必要・・・
 トイレもまだ和式だから、洋式にしたいわ・・・」

 そんな悩みを抱えたご家族が住宅をリフォームする際、介護保険など公的な補助制度が利用できるのを、ご存知でしょうか?

 介護保険が2000年4月に始まって以来、全国で多数の方がこの制度を利用しています。内容は、要支援〜要介護の認定者が対象で、住宅リフォームの工事費の9割が戻ってくるというものです。(給付限度額は20万円・1割は自己負担)

◇ 具体例 ◇

 例1・手すりの取り付け
   廊下、トイレ、浴室、玄関などに転倒予防のために取り付ける場合

 例2・床材の変更
   浴室では、転倒防止のために滑りにくい床材に。
   居室では、板製(フローリング)やビニール系床材などへ変更し、
   車椅子などの移動が円滑にできるように

 例3・便器の取り換え
   和式便器を洋式便器にする。この際、洗浄機能付き
   (ウォシュレット付き)便座に交換することも可能

 例4・床段差をなくす(バリアフリー)
    居室、廊下、トイレ、浴室、玄関などで敷居を下げたり、
    浴室の床のかさ上げをしたりして、床段差をとりのぞく。

 また、自治体独自の支援制度もあります。たとえば、東京都内の自治体の場合、住宅改修予防給付があり、介護保険では要支援や要介護に該当しない場合でも、65歳以上で改修が必要と認められた人は利用できます。給付内容は介護保険と同じです。

  こういった、介護保険以外の支援制度もあるので、一度、お住まいの市区町村の役場に問い合わせてみましょう。


 


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 ワンポイントアドバイス 保険の予定利率って何?



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Last modified 2007.5.5