北海道富良野を舞台に展開された高視聴率ドラマ「北の国から」は、2002年に最終章が放映されていますが、その時のテーマは「遺言」でした。主人公黒板五郎が、息子純と娘蛍へ遺言を書くシーンでドラマは終わるのですが、このドラマを見て、「自分も遺言を書いてみようか?」と思った人は少なくなかったのではないでしょうか?自分が亡くなったあと読んで欲しい、伝えたいメッセージとして息子と娘への思いをとつとつと語る主人公の姿は、「遺言」とは単に資産の分配方法の指定だけではないのだということ、さらに富裕層だけでなく、すべての人に身近な問題なのだということが画面を見ている視聴者に伝わったのです。
家族が亡くなって遺言がない場合は、相続人全員の合意で「遺産分割協議書」が作成され遺産を分配しますが、合意に至らない場合、分配方法でもめるケースは少なくありません。その場合は家庭裁判所へ持ち込まれることになりますが、この家裁に持ち込まれる案件の約1割は相続財産が1,000万円以下のケースだそうです。つまり、相続財産の「多い・少ない」ではなく、「もめる時にはもめる」ということなのでしょうか?相続人が「相続税を納めなければならない相続」は全体の約4〜5%と言われていますが、税金云々ではなく、「相続」は全ての人にあることを忘れてはなりません。
□ 特に遺言が必要なケースは・・・
- 夫婦間に子供がなく、配偶者に全ての資産を遺したいとき
- 法定相続分とは異なる分配をしたいとき
- 先妻の子供と後妻が入る場合
- 内縁の妻に資産を遺したいとき
- 個人企業や農業などをしている場合
- お世話になった人に財産を遺したいとき
- 相続人がいない場合 etc
又、遺言には一定のルールがあり、ルール通りに作成しないと効力がありません。ここで主な遺言の種類として3つご紹介します。
(1)自筆証書遺言
全文自書で、必ず書いた日付を明記し、署名・押印が必要です。遺言は複数通見つかる場合があり、その際は日付の新しいものが有効になります。くれぐれも「○月吉日」などと書かないようにしましょう。簡単で費用もかかりませんが、どのように保管するかがポイントです。せっかく書いても、どこかにしまいこんで日の目を見なければ意味がありません。
(2)
公正証書遺言
公証人によって作成、原本を保管してもらう遺言で、確実に遺言できるという点ではこれが一番です。遺言者の口述をもとに、公証人はその内容を正確に文章化します。そして、それを遺言者と2人以上の証人が確認し、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・押印して完成します。安全・確実ではありますが、作成費用として法定化された手数料が相続財産の額により必要になります。
(3)秘密証書遺言
あらかじめ自分で作成した遺言を封印し、それを公証人と2人以上の証人に自己の遺言であることを申述し、公証人がその封紙上に日付を記載し、遺言者・証人と共に署名・押印をして作成します。遺言の中味を秘密にすることはできますが、公証人が内容を確認することができませんので、その内容に法的不備があったりした場合は遺言自体が無効になってしまう可能性がないとは言えません。
上記3つの遺言のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は相続があった後開封する時には、家庭裁判所に届け出て「検認手続き」が必要になります。
誰にでも必ず訪れる「相続」が「争続」にならないように、「あとは勝手にやってくれ」ではなく、やはり自分の意志ははっきりさせておくことが「最後の配慮」として必要ではないでしょうか?
|