2008 10月号 

プラネット通信

介護保険の活用法
FP 加藤惠子


 厚生労働省が今年7月に発表した平成19年度の日本人の平均寿命(0歳時の平均余命)は、男性は79.19歳、女性は85.99歳でした。男女とも前年度より延びて過去最長であり、男性はアイスランド、香港に次いで世界第三位、女性は23年連続第一位となっています。0歳児の将来の死亡原因としては「がん」が最も高く、男性は約30%、女性は約21%が「がん」で死亡すると予測されています。
 「心疾患」と「脳血管疾患」を含むいわゆる「三大疾病」による死因は男女とも50%超えていますが、医学の進歩によって、もしこれらの疾患が完全に治療できるようになると、平均寿命は男性で8.25年、女性で7.12年延びるといわれています。

 一方、私達一人ひとりが生きている長さの中で、元気で活動的に暮らすことができる長さに「健康寿命」があります。
 WHO(世界保健機構)が2002年に発表した保健レポートによると、日本人の平均健康寿命は73.6歳(世界一)でした。介護などを必要としない自立した生活ができる期間といえますが、「平均寿命」との差は男女ともかなりあると言えるでしょう。健康で長生きできることが一番ですが、なかなかそうもいかない現実があることも事実です。

 もし介護状態になってしまったら、本人も家族も大変です。「介護離職」や「老老介護」などの問題はもちろん、24時間体制の介護は想像を絶するものがあるでしょう。その時の家族の負担を少しでも軽減し、「介護」を国全体で支えあおうという目的でできたのが「公的介護保険」です。2000年4月からスタートした社会保険制度で、今年で8年たちました。一昨年、一部改正がありましたが、財源の問題等を含め様々な問題が顕在化しています。

 高齢者の増加に伴い、要支援を含む要介護認定者数は年々増えています。85才以上4人に1人は介護状態であるとも言われています。が、ここで一つ注目すべき数値があります。認定者数は2006年で既に430万人を超えていますが、実際に介護給付を受けている人は、厚生労働省の今年の4月に行なわれた介護給付実態調査によると292万人となっています。この差は何を意味するのか、それは、介護給付を受ける際の1割負担であると言えるでしょう。例えば、要介護5の高齢者が月に30万円のサービスを受けるには、月3万円の自己負担が毎月必要になります。つまり、認定を受けたとしてもそのまま介護サービスを受ける図式にはなりにくい実態が浮かび上がってきます。

 老後の準備を考える時に、介護状態になった自分を想像することはできれば避けたいのは誰しも同じですが、これからの少子高齢社会においては目をそむけることはできない問題です。さらに、公的介護保険に100%頼れない実態があるのであれば、もしそういう状態になってしまった時の経済的な準備はしておくべきではないでしょうか。そのための貯蓄もしかりですが、民間の介護保険を上手に利用することも有効な一つの手立てであると考えます。

 介護保険は保険料が高いというイメージがありますが、保険金額を調整することによって安く保障を確保することもできます。かつては保険金の支払い事由が厳しく、ほとんどもらえないのではないかと思われていましたが、最近は介護度に応じて受け取れるタイプが増えています。保険で介護サービスの1割負担をカバーできればというプランであれば、大きな保障は必要ありません。大切なことは、「自分に合った老後の準備」を「できる範囲できちんとする」ことではないでしょうか?

 

 


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Last modified 2008.10.13