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三大疾病とお金

渡辺一江

 厚生労働省の「人口動態統計」によると、日本人の三大死亡原因はがん(悪性新生物)、心疾患、肺炎ですが、一般的に三大疾病とは「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」のことをさします。高齢化が原因でそのリスクは年々高まっており、この3つで日本人の死亡の53.4%を占めています。(保険商品における三大疾病は、最近「がん」「心疾患」「脳血管疾患」と対象が拡大されている場合もあります。)

<厚生労働省「人口動態統計(確定数)の概況」/2014年>

 三大疾病の要因は、日頃の食生活やストレスが大きな原因と思われ、生活習慣病とも言われています。初期の自覚症状が少なく、日頃の生活の積み重ねにより、長い期間を経てから症状が現れるのが特徴です。

「がん」
がんは現在、2人に1人が罹るといわれ、その割合は残念ながら年々増加しています。一般的にがんの罹患率も死亡率も男性の方が高くなっていますが、20代・30代の女性ががんにかかる確率は男性の2倍です。これは、若いうちから、女性特有の子宮頸がんや乳がんなどのリスクが高いためです。
そして、最近、がんは早期発見、早期治療をすれば治る病気になりつつありますが、保険のきかない治療に対する費用はもちろん、治療中は副作用などで仕事ができないなどの収入減のリスクもあります。

「心筋梗塞」
急性心筋梗塞は、心臓への血管が詰まることで、心臓に流れる血液が止まってしまい、強い胸の痛みや息苦しさを感じるなど、症状が出たときは緊急を要する病気です。
治療には、緊急の手術が最も効果的で、詰まっている部分を広げる処置などを行います。
狭心症も
 治療法は日々進歩していますので、適切な処置や治療を受け、さらに予防策を講じることが大切です。

「脳血管疾患」
「脳卒中」や「脳梗塞」のことで、脳の血管が詰まり、血液が流れなくなり、血管が破裂したりするなどの症状が起こります。以前は死因の原因の第1位でしたが、医療技術の進歩により、死亡率は減少し、現在は肺炎に次いで4位になっています。
 但し、65歳以上の脳血管疾患では、平均在院日数は100日を超え、三大疾病のひとつ「脳卒中」に罹った場合は、長期の入院が懸念されます。その結果、状態にもよりますが介護が必要となる危険性もあります。
脳血管疾患はリハビリが最も重要になってきますが、障害が残ってしまうことも多いのが特徴です。このような事情により、治療も長期化することが多く、仕事への復帰も遅くなります。そして、元の業務には戻れず、収入減少のリスクと治療費のリスクが大きくのしかかってきます。

 厚生労働省の「平成26年 患者調査」によると、退院患者の平均在院日数は31.9日となっています。
病気別にみた退院患者平均在院日数は下記のとおりです。

傷病別・年齢階級別平均在院日数

<厚生労働省「患者調査」/平成26年>

 治療費については、医療技術の進歩により、がんなどの治療で画期的な新薬が実用化されつつあります。入院費用だけでなく、高価な新薬を使った場合は、毎月の医療費及び薬代の負担が増大していきます。ご存知のように、高額療養費制度がありますが、保険のきかない治療を受けた場合は全額自己負担です。保険が適用され、高額療養費制度が使えたとしても、一般所得者の自己負担限度額は1か月約9万円になります。治療が長期化すれば、毎月9万円の負担は年間、約100万円の負担となり、お金の問題で、治療を続けられない人もいるとのことです。
 現役世代で収入が減少した場合、支出の見直しをしなければなりませんが、住宅ローンなどは止めることはできません。就業不能が収入減に直結する場合は、所得の補償も考慮しておくべきでしょう。
 又、治療が終わったとしても、その後介護状態になってしまったら、今度は介護のための費用がかかってきます。介護の期間は長期になることが多く、入院費用よりも重くなります。

 医療保障・介護保障の準備は、貯蓄と保険で備えるしかありません。
入院保障のほかに三大疾病のリスクをカバーするためにまとまった一時金が支払われる保険も各社で販売されていますが、支払われる時の条件が一律ではないので注意が必要です。