2007 3月号 

プラネット通信

第30回 リスクマネジメント その6
FP 加藤惠子

 世の中に「保険システム」が誕生したのは、14世紀、イタリアの商業都市で「海上保険」として生まれました。もとになったシステムは、古代から存在した「海上貸借」です。

  「海上貸借」とは、投資家からお金を借りて航海に出て、高価な物品を積んで帰り、それらを売って莫大な利益を獲得しようと企画する冒険的な商人が利用するシステムでした。当時は、運搬手段としての船舶が海賊の襲撃を受けたり、悪天候によって船が沈没してしまうといった災難に見舞われることがしばしばありました。このようなリスクを補償してくれる手立てはないものかと考えられた末に生み出されたシステムが、この「海上冒険貸借」と言われています。多額の金銭を借り、船を造り、船員を乗せ航海に出発、成功すれば億万長者になるかもしれませんが、失敗した場合は返済どころではなく、生命の保証さえありません。そこで、この「海上貸借」には特別な条件が付いていました。失敗した場合は、借りたお金を返さなくてもいいという条件です。お金を貸す側(投資家)は、航海が失敗したら貸したお金は戻ってきませんので、必然的に貸出利率は高くなり、当時の記録では30%という高利率もあったようです。
 このような「海上貸借」は、地中海を中心に広く行なわれていましたが、1230年頃、ローマ法王グレゴリウス9世が「徴利禁止令」を発したことにより徐々に減り、やがて衰退していったと言われています。

 14世紀末にイタリアの商業都市で誕生した海上保険は、その後、地中海を東西に渡り、フランスのマルセーユ、スペインのバルセロナなどに伝わっていきました。更に、北ヨーロッパや西のロンドンへ伝播し、18世紀以後はロンドンを中心に発達し、それに大きく貢献したのは「ロイズ」です。ロイズは、エドワード・ロイドという人が経営するコーヒー店を起源とする保険マーケットです。ロイドの経営するコーヒー店はテムズ川の船着場の近くにあったため、海事関係者が多く集まっていましたが、この海事関係者にとって貴重な情報を顧客に提供したためますます繁栄し、ついには金融の中心街であるロンバート・ストリートに移転し、海上保険取引の中心として名声を獲得しました。このように、海上保険の市場は、コーヒー店の名前にちなんで「ロイズ」と名付けられ、その後海上保険だけでなく、世界中のあらゆるリスクを請け負う保険集団として発展していきました。

 海上保険ができて後、1666年のロンドンの大火を契機に火災保険が誕生しました。ロンドン大火の惨状を目の当たりにしたニコラス・バーボンが世界最初の火災保険会社を開業したと言われています。1681年のニコラス・バーボンによる火災保険会社ファイア・オフィスの開業は、今日の私営火災保険の始まりであり、海上保険が陸に上がった年でもあります。

  日本では、1879年に営業を開始した東京海上保険会社(現在の東京海上日動火災)がわが国最古の保険会社で、日本における海上保険事業の始まりでした。火災保険は、1887年設立の東京火災保険会社(現在の損保ジャパン)によって広く始められました。

 現在では、「リスクあるところに保険あり」と言われる言われるほど数多くの保険がありますが、 保険は人々が文明を発達させる過程において起こる避けがたいリスクに対抗するために考え出された、まさに人間の知恵がもたらしたすばらしい「発明」であると言えます。でも、その「発明」を商業ベースに振り回されることなく、「自ら賢く選択・利用すること」が大切であることは言うまでもありません。

 



 奥様の毎日の暮らしをサポートする耳より情報コーナー     FP 後藤田潤子


年金について

 自分たちが老後を迎えた時、年金はいくらもらえるのだろう・・・これからますます、少子高齢化社会になるから、今の老人の方たちよりは年金、もらえないのだろうなぁ・・・そういった漠然とした不安を抱えていらっしゃる方は多いと思います。

  これまでは、年金受給開始時期が近づくと社会保険庁から「年金加入記録のお知らせ」が届きました。これは加入歴だけで、年金額を知りたい時には同封の「確認はがき」を返送すると「年金見込み額」がわかるというものでした。

  社会保険庁は、年金制度をより深く理解してもらうために、平成20年4月〜新たに「ねんきん定期便」のサービスを開始することにしました。

これは、すべての被保険者に保険料納付実績(いくら支払ったか?)や年金見込額(いくたもらえるか?)をお知らせするというサービスです。
 ご自分の住所宛に、ご自分の誕生月にそのお知らせが送られてきます。

 この「ねんきん定期便」の先行実施策がとられており、平成19年3月〜35才になる人、平成19年12月〜45才になる人には送られてきます。
 「ねんきん定期便」により、年金がいくらもらえるかわからないといった不安が解消され、年金で不足する分を貯金や保険でどう対策をたてていけばよいか、考えやすくなりますね。

 なお、来年まで待てない!早く知りたい方には・・・
インターネットで、「国民年金って何?」(www.nenkin.go.jp)を見ていただくと、その中に「年金見込額試算」という項目があります。
簡単な入力で、自分の年金がいつからどれくらいもらえるか、簡易試算ができます。

      *********

 年金がいくらもらえるか、その前に、きちんと納付していないと始まりません。 国民年金の保険料支払いに、少しお得な前納制度があるのをご存知でしょうか?

ねんきん前納・・・納付期間 4月1日〜5月1日まで 現金払いで国民年金を1年分前納すると、年間3000円割引有。金融機関の窓口かインターネットバンキングでの支払いとなります。

 


これまでのAdvice

 プラネット通信 2007 2月号
 プラネット通信 2006 12月号
 プラネット通信 2006 10月号
 プラネット通信 2006 8月号
 プラネット通信 2006 6月号
 プラネット通信 2006 4月号
 プラネット通信 2006 2月号
 プラネット通信 2005 12月号
 プラネット通信 2005 10月号
 プラネット通信 2005 8月号
 プラネット通信 2005 6月号
 プラネット通信 2005 4月号
 プラネット通信 2005 2月号
 プラネット通信 2004 12月号
 プラネット通信 2004 10月号
 プラネット通信 2007 1月号
 プラネット通信 2006 11月号
 ●プラネット通信 2006 9月号
 ●プラネット通信 2006 7月号
 プラネット通信 2006 5月号
 プラネット通信 2006 3月号
 プラネット通信 2006 1月号
 プラネット通信 2005 11月号
 プラネット通信 2005 9月号
 プラネット通信 2005 7月号
 プラネット通信 2005 5月号
 プラネット通信 2005 3月号
 プラネット通信 2005 1月号
 プラネット通信 2004 11月号
 プラネット通信 創刊号
 ワンポイントアドバイス 保険の予定利率って何?



Copyright 2001-2006 K-Planet Corp. All rights reserved.
Last modified 2007.4.6